手術室を超えた清潔空間：クリーンルーム

手術室を超えた清潔空間：クリーンルーム

クリーンルームとは

– クリーンルームとはクリーンルームとは、空気中に浮遊する微粒子や微生物の量を極限まで抑え、さらに温度や湿度、圧力なども精密に制御された特別な部屋のことです。例えるならば、病院の手術室をさらに高度に清潔にした空間を想像してみてください。手術室では、主に細菌やウイルスなどの比較的大きな粒子を除去することに重点が置かれています。しかし、クリーンルームでは、それよりもはるかに小さな、肉眼では確認できないほどの微粒子までも徹底的に排除します。具体的には、髪の毛の直径のおよそ100分の1という微細な粒子までをも制御しているのです。このような高度な清浄度が求められる理由は、半導体や精密機器の製造において、わずかな塵埃の混入が製品の品質や性能に重大な影響を及ぼす可能性があるからです。クリーンルームは、最先端技術の信頼性と進歩を支えるために不可欠な空間と言えるでしょう。

活躍の場は医療分野だけにとどまらない

近年、高度に清潔な環境が求められる場は、医療分野以外にも広がりを見せています。精密機械の製造工場や、医薬品、食品などを製造する工場でも、塵一つない空間である「清浄空間」が活躍しています。 では、なぜこれらの分野で、それほどまでに清潔な環境が求められるのでしょうか？

現代社会において欠かせないスマートフォンを例に考えてみましょう。スマートフォンには、非常に小さな電子部品が数多く使用されています。もし、これらの部品に目に見えないような小さな塵が付着すると、正常に動作しなくなってしまう可能性があります。また、人の命に関わる医薬品の製造においても、異物が混入することは決して許されません。ほんのわずかなゴミが、薬の効果や安全性を損ない、重大な健康被害を引き起こす可能性もあるからです。

このように、様々な製品の製造過程において、塵や埃の混入は、製品の品質や安全性を大きく左右する深刻な問題となります。清浄空間は、このような問題を防ぎ、私たちが安心して製品を使用するために、非常に重要な役割を担っていると言えるでしょう。

空気の流れ方にも工夫が

手術室や精密機器の製造工場などで目にする「クリーンルーム」。塵や埃、微生物などが極限まで排除された空間ですが、一体どのようにしてその清浄さを保っているのでしょうか？実は、空気の流れ方にも工夫が凝らされているのです。

私たちが普段生活する部屋では、窓を開けて空気の入れ替えを行いますが、クリーンルームではそうはいきません。外部から汚れた空気が入り込むことを防ぐため、常にクリーンな状態に保たれた空気を循環させているのです。

クリーンルームで採用されている空気の流れ方には、主に二つの方式があります。一つは「層流」と呼ばれる方式で、天井から床に向かって空気を一定方向に流します。まるでカーテンのように、空気の層が上から下へと流れ落ちることによって、空気中の微粒子を効率的に取り除くことができます。もう一つは「乱流」と呼ばれる方式で、部屋全体に空気を循環させる方法です。この方式は、複雑な形状の部屋や、多くの機器が設置されている場合に有効です。

このように、クリーンルームでは空気の流れ方一つとっても、高度な技術が駆使されているのです。

クリーンルームに入るための準備

精密機器の製造や医薬品の開発など、塵や埃を極限まで排除した環境で行われる作業には、クリーンルームが欠かせません。クリーンルームは、空気中の微粒子数を厳密に管理した空間であり、製品の品質や安全性を確保するために重要な役割を担っています。しかし、私たち人間は、衣服や体から、目には見えない小さな塵や毛髪などを常に放出しています。そこで、クリーンルームに入る前には、これらの微粒子を持ち込まないようにするための特別な準備が必要となります。

まず、専用のクリーン服に着替えなければなりません。このクリーン服は、空気を通しにくい特殊な素材で作られており、私たちの体から出る塵や毛髪、フケなどが外部に漏れ出すのを防ぎます。さらに、帽子やマスクを着用して、髪の毛や顔からの落下物も防ぎます。また、靴から出る塵を防ぐために、靴カバーも必ず着用します。肌が露出していると、そこから垢や汗などが落ちてしまう可能性があるため、なるべく肌を露出しないようにすることが大切です。

これらの服装を整えた後、クリーンルームに入る直前には、エアシャワーと呼ばれる装置を使います。これは、体についた塵を強力な風で吹き飛ばす装置です。エアシャワーを浴びることで、衣服や体表面に付着した微粒子を徹底的に除去し、清潔な状態になってからクリーンルームに入室することができます。

眼科手術におけるクリーンルームの重要性

眼科手術は、人の視機能を扱う非常に繊細で重要な医療行為です。そのため、手術を行う環境にも細心の注意が払われており、その中でも特に重要なのが手術室の清浄度です。手術室は、空気中に浮遊する目に見えないほどの小さな塵や埃、細菌などを徹底的に除去した「クリーンルーム」として管理されています。
なぜなら、眼科手術では、目薬や手術器具など、直接目に触れるもの全てが清潔であることが求められるからです。ほんのわずかなゴミや細菌でも、目に大きな影響を与える可能性があります。例えば、白内障手術では、濁った水晶体の代わりに眼内レンズと呼ばれる人工レンズを挿入しますが、このレンズに微粒子が付着していると、術後に炎症を起こしたり、視力が低下したりするリスクがあります。
クリーンルームは、このような手術中の感染リスクや合併症を最小限に抑え、患者さんが安心して手術を受けられるよう、安全で清潔な手術環境を提供するために、欠かせないものなのです。