かつて恐れられた感染症:トラコーマ
眼のことを教えて
先生、「トラコーマ」って病気について教えてください。教科書に載っていたんですけど、今ではほとんど見られない病気って書いてあって、どんな病気なのかよく分かりませんでした。
眼の研究家
良い質問ですね。「トラコーマ」は、目の病気で、結膜が炎症を起こす病気なんだ。何度も炎症が繰り返されると、角膜に傷がついて視力が低下したり、最悪の場合は失明することもある病気なんだよ。
眼のことを教えて
そうなんですね。でも、どうして今はほとんど見られないんですか?
眼の研究家
それはね、生活環境が良くなって衛生状態が改善されたことが大きいんだ。昔は「トラコーマ」は感染力が強い病気として恐れられていたんだけど、衛生管理が行き届くようになった現在では、日本ではほとんど見られなくなったんだよ。
トラコーマとは。
「トラコーマ」は目に起きる病気の名前です。これは、ラコーマという病原体が原因で目の結膜に炎症を起こします。何度も繰り返し炎症が起こることで病気が進んでいき、角膜に傷跡が残ったり、目が見えなくなったりすることがあります。今の日本では、ほとんど見られなくなった病気です。
トラコーマとは
– トラコーマとはトラコーマは、クラミジア・トラコマチスというとても小さな生き物によって起こる目の病気です。この病気になると、まぶたの裏側にある結膜という部分が炎症を起こして赤く腫れます。結膜は、白目の表面とまぶたの裏側を覆っている薄い膜で、眼球を保護する役割を担っています。トラコーマの怖いところは、一度かかると繰り返し炎症を起こす可能性があることです。炎症が治ってもまたすぐに炎症を起こし、そのたびに結膜に傷が残っていきます。そして、その傷が治る過程で、まぶたの裏側に瘢痕と呼ばれる硬い組織ができてしまうのです。瘢痕ができると、まぶたが内側に向かって縮んでいき、まつげが眼球に当たるようになります。まつげは本来、眼球にゴミや埃が入るのを防ぐ役割がありますが、トラコーマによって内側に向いてしまったまつげは、眼球を傷つけ、視力に深刻な影響を与える可能性があります。トラコーマは放置すると失明に至ることもある病気ですが、早期に発見し、適切な治療を行えば、視力障害の進行を抑えることができます。
症状 | 経過 | リスク |
---|---|---|
結膜の炎症 | 繰り返し炎症を起こす | 瘢痕形成 |
まぶたの裏側に瘢痕形成 | まぶたが内側に縮む | まつげが眼球に当たる |
まつげによる眼球への刺激 | 眼球を傷つける | 視力障害、失明の可能性 |
主な症状
トラコーマは、初期には細菌に感染した時と同じような症状が出ます。目がゴロゴロしたり、チクチクする異物感があり、涙が多く出たり、目やにが出たりします。また、まぶたが腫れて赤くなり、光を見るとまぶしく感じることもあります。これらの症状は、自然に軽快することもありますが、完治せずに再発することが多く見られます。
トラコーマは、繰り返し炎症を起こすことで、まぶたの裏側に傷跡ができます。傷跡は、やがて硬く縮んでいき、まぶたが内側に向かって縮んでいきます。その結果、まつげが眼球に触れて、角膜を傷つけるようになります。さらに症状が進むと、角膜に濁りが生じて視力が低下し、最悪の場合には失明に至ることもあります。
段階 | 症状 |
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初期 | ・異物感 ・涙が多い ・目やにが出る ・まぶたの腫れ、赤み ・光過敏 |
進行期 | ・まぶたの裏側に傷跡 ・まぶたが内側に縮む(眼瞼内反) ・まつげが眼球に触れる ・角膜の損傷 ・角膜の濁り ・視力低下 ・失明 |
深刻な合併症
– 深刻な合併症トラコーマは、放置すると深刻な合併症を引き起こす可能性のある感染症です。初期段階では、目の痒みや異物感、目やになどの症状がみられますが、進行すると視力に影響を及ぼすようになります。トラコーマが進行すると、角膜に傷がつき始めます。角膜とは、眼球の表面を覆っている透明な膜で、カメラのレンズのような役割を果たし、光を眼球に取り込んでいます。この角膜に傷がつくと、視界がぼやけたり、物が歪んで見えたりするなど、視覚に異常が現れます。さらに症状が進むと、角膜が白く濁ってしまう「角膜混濁」を引き起こす可能性があります。角膜混濁は、視界がかすんで見えにくくなるだけでなく、場合によっては激しい痛みを伴うこともあります。また、角膜に潰瘍(かいよう)ができる「角膜潰瘍」も、トラコーマの合併症として挙げられます。角膜潰瘍は、細菌感染などを併発しやすく、治療が遅れると角膜に穴が開いてしまうこともあります。角膜混濁や角膜潰瘍は、いずれも失明につながる可能性のある危険な状態です。トラコーマは早期発見・早期治療が重要となります。目の痒み、目やに、視界不良など、少しでも異常を感じたら、早めに眼科を受診しましょう。
段階 | 症状 | 解説 |
---|---|---|
初期段階 | 目の痒み、異物感、目やに | |
進行段階 | 角膜に傷 | 視界不良(ぼやけ、歪み) |
重症化 | 角膜混濁 | 視界不良、痛みを伴う場合あり |
重症化 | 角膜潰瘍 | 細菌感染のリスク、角膜穿孔の可能性 |
かつて猛威を振るった感染症
トラコーマは、過去において世界中で猛威を振るった感染症です。目につき、強い炎症を引き起こすことで視力を徐々に奪い、最悪の場合は失明に至ることもあります。かつては世界中で流行し、失明の主な原因の一つとされていました。
特に、衛生状態の悪い地域で蔓延しやすいため、安全な水へのアクセスが限られていたり、衛生設備が整っていない地域で深刻な問題となっていました。
しかし、20世紀後半からの世界的な衛生状態の改善や、効果的な抗生物質の開発と普及により、先進国ではトラコーマはほぼ撲滅されました。
現在では、トラコーマは主にアフリカやアジアの一部の開発途上国で見られ、世界保健機関(WHO)は、安全な水と衛生設備へのアクセスを改善すること、感染者の早期発見と治療を行うことなど、トラコーマの制圧に向けた取り組みを積極的に行っています。
項目 | 内容 |
---|---|
病名 | トラコーマ |
症状 | 強い炎症により視力低下、最悪の場合失明 |
流行地域 | かつては世界中で流行 現在ではアフリカ、アジアなどの一部の開発途上国 |
主な感染原因 | 衛生状態の悪さ(安全な水へのアクセスの制限、衛生設備の不備など) |
対策 | 安全な水と衛生設備へのアクセスの改善、感染者の早期発見と治療 |
現在のトラコーマ
-# 現在のトラコーマ
トラコーマは、クラミジア・トラコマチスという微生物によって引き起こされる目の感染症です。かつては世界中で蔓延していましたが、衛生状態の改善や治療法の進歩により、多くの地域で撲滅されました。しかし、現在でも、アフリカ、アジア、中南米などの開発途上国の一部地域では、依然としてトラコーマが流行しており、人々の視力と生活を脅かしています。
これらの地域では、衛生状態が悪く、清潔な水や衛生設備が不足していることが、トラコーマの蔓延に拍車をかけています。特に、繰り返し感染することで、目の表面に傷がつき、視力が徐々に低下していきます。さらに症状が進行すると、まぶたの裏側が反転し、まつげが眼球を刺激するようになり、激しい痛みを伴うこともあります。
世界保健機関(WHO)は、2020年までにトラコーマによる視力障害を撲滅することを目標に掲げ、積極的な活動を行っています。具体的には、感染拡大を防ぐための抗生物質の大量投与、顔の衛生管理の重要性に関する啓発活動、そして、安全な水へのアクセス改善に向けた取り組みなどを推進しています。これらの活動を通じて、トラコーマの蔓延を抑制し、人々の視力と健康を守るために、国際社会全体で協力していくことが重要です。
項目 | 内容 |
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原因 | クラミジア・トラコマチスという微生物 |
現状 | 衛生状態の改善や治療法の進歩により、多くの地域で撲滅。 アフリカ、アジア、中南米などの開発途上国の一部地域では依然として流行。 |
流行地域の特徴 | 衛生状態が悪く、清潔な水や衛生設備が不足 |
症状 | 繰り返し感染することで、目の表面に傷がつき視力が徐々に低下。 まぶたの裏側が反転し、まつげが眼球を刺激し、激しい痛み。 |
WHOの取り組み | 2020年までにトラコーマによる視力障害を撲滅することを目標。 – 抗生物質の大量投与 – 顔の衛生管理の重要性に関する啓発活動 – 安全な水へのアクセス改善 |