失明につながることも?糖尿病網膜症とは
眼のことを教えて
先生、『糖尿病網膜症』って、どんな病気ですか?
眼の研究家
良い質問ですね。『糖尿病網膜症』は、糖尿病が原因で目の網膜にある血管が傷んでしまう病気です。網膜は、カメラでいうとフィルムの役割をする場所で、光を感じる大切なところです。
眼のことを教えて
網膜の血管が傷むと、どうなるんですか?
眼の研究家
血管がもろくなって出血しやすくなるので、視力が低下したり、最悪の場合は失明してしまうこともあります。日本では失明原因の上位にあげられるほど怖い病気なんですよ。
糖尿病網膜症とは。
「糖尿病網膜症」とは、糖尿病が原因で目が悪くなる病気のことです。 糖尿病になると、目の中の血管がもろくなってしまい、出血しやすくなります。 その結果、視力が低下したり、最悪の場合は失明してしまうこともあります。 実は、日本で目が見えなくなる原因の上位に入る病気の一つなんです。
糖尿病網膜症とは
– 糖尿病網膜症とは私たちの眼の奥には、カメラで例えるとフィルムのような役割を果たす、網膜という重要な組織が存在します。網膜は、光を感知して脳に視覚情報を送ることで、私たちが景色や文字、色などを見ることができるようにする、なくてはならないものです。糖尿病網膜症は、その名の通り、糖尿病が原因で網膜に異常が起こる病気です。糖尿病になると、血液中の糖の濃度(血糖値)が高くなり、網膜の血管を傷つけてしまいます。その結果、網膜に酸素や栄養が行き渡らなくなり、様々な症状が現れます。初期段階では、自覚症状がほとんどないため、気づかない場合も多いです。しかし、病気が進行すると、ものが歪んで見えたり、視界の中心が見えにくくなったり、視界がぼやけたりします。さらに悪化すると、網膜剥離などを併発し、失明に至る可能性もあります。糖尿病網膜症は、早期発見と適切な治療によって進行を抑制し、視力を守ることができる病気です。糖尿病と診断された方はもちろん、糖尿病の疑いがある方も、定期的に眼科を受診し、網膜の状態を検査することが大切です。
項目 | 説明 |
---|---|
糖尿病網膜症とは | 糖尿病が原因で網膜に異常が起こる病気。高血糖により網膜の血管が傷つき、酸素/栄養不足に陥る。 |
症状 | 初期は無症状。進行すると、 ・物が歪んで見える ・視界の中心が見えにくい ・視界がぼやける ・網膜剥離 ・失明 |
予防と対策 | 糖尿病患者やその疑いがある人は、定期的な眼科検診で早期発見・治療が重要。 |
原因と症状
– 原因と症状
糖尿病網膜症は、その名の通り糖尿病が原因で引き起こされる病気です。
糖尿病になると、血液中の糖分であるブドウ糖の濃度が高くなりますが、この状態が長く続くと、全身の血管にさまざまな悪影響を及ぼします。
網膜は、眼の奥にあり、カメラのフィルムのような役割を果たす重要な組織ですが、この網膜にも細い血管が張り巡らされており、ブドウ糖の影響を受けやすいのです。
高血糖状態が続くと、網膜の血管は次第に傷つき、もろくなってしまいます。
その結果、血管が詰まったり、破れたりしやすくなり、網膜に必要な酸素や栄養が十分に供給されなくなります。
さらに、出血が起こりやすくなるため、網膜に腫れやむくみが生じたり、最悪の場合、網膜剥離を引き起こすこともあります。
糖尿病網膜症は初期段階では自覚症状がほとんどありません。
そのため、糖尿病と診断された方は、自覚症状がなくても、定期的に眼科を受診し、網膜の状態を検査することが非常に重要です。
早期発見・早期治療によって、病気の進行を遅らせ、視力低下などの深刻な合併症を予防することができます。
原因 | 症状 |
---|---|
糖尿病により血液中のブドウ糖濃度が高くなる状態が続くこと |
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進行段階
糖尿病網膜症は、目の奥にある網膜という光を感じる膜に、高血糖による障害が起こる病気です。進行度合いによって大きく4つの段階に分けられます。
最初の段階は「単純糖尿病網膜症」です。この段階では、網膜の血管が少し膨らんだり、血管からわずかに血液成分が漏れ出てしまう「点状出血」がみられることがあります。自覚症状はほとんどありませんが、眼底検査でこれらの変化が見つかった場合は、糖尿病網膜症が進行しているサインと捉えることができます。
次の段階は「前増殖糖尿病網膜症」です。この段階になると、血管がさらに膨らんで「毛細血管瘤」と呼ばれる状態になったり、血液の流れが悪くなって網膜に酸素が行き渡らなくなったりします。酸素不足を補うために、網膜は「網膜症性虚血」と呼ばれる状態になります。
さらに進行すると「増殖糖尿病網膜症」という状態になります。この段階では、網膜への酸素供給を補おうとして、「新生血管」と呼ばれる異常な血管が新たに作られます。しかし、この新生血管は非常に脆いため、容易に出血し、網膜剥離や緑内障などの合併症を引き起こす可能性があります。
最も進行した状態では、「黄斑浮腫」が起こります。黄斑とは、網膜の中心部にある、物の形や色を識別するのに重要な部分です。ここに出血やむくみが生じると、視力が著しく低下し、最悪の場合は失明に至ることもあります。
糖尿病網膜症は自覚症状が出にくい病気ですが、早期発見・早期治療によって進行を遅らせ、視力を守ることができます。定期的な眼底検査が非常に重要です。
段階 | 症状 | 特徴 |
---|---|---|
単純糖尿病網膜症 | ・自覚症状ほとんどなし ・眼底検査で血管の膨らみや点状出血がみられる |
網膜の血管が膨らんだり、わずかに血液成分が漏れ出る。 |
前増殖糖尿病網膜症 | ・自覚症状ほとんどなし ・網膜に酸素が行き渡らなくなる |
血管がさらに膨らんで毛細血管瘤になる。網膜症性虚血がみられる。 |
増殖糖尿病網膜症 | ・新生血管からの出血 ・網膜剥離、緑内障などの合併症 |
酸素供給を補うため、脆い新生血管が作られる。 |
黄斑浮腫 | ・視力低下 ・最悪の場合、失明 |
黄斑に出血やむくみが生じる。 |
治療法
糖尿病網膜症の治療は、病気の進行度合い、症状、そして患者さん一人ひとりの状態に合わせて行われます。そのため、治療法は画一的ではなく、多岐にわたります。
初期の段階では、血糖値、血圧、コレステロール値を適切な範囲に保つことが重要となります。これは、食事療法や運動療法、必要であれば薬物療法を組み合わせることで実現を目指します。日々の生活習慣を改善することで、病気の進行を遅らせたり、予防したりすることができます。
病気が進行し、網膜に異常な血管が増殖するなど、視力に影響が出始める段階になると、より積極的な治療が必要となります。代表的な治療法として、レーザー治療、硝子体手術、抗VEGF療法などが挙げられます。
レーザー治療は、網膜にレーザーを照射することで、異常な血管を凝固させ、出血を抑制したり、新生血管の発生を抑えたりする効果があります。硝子体手術は、眼球内にある硝子体というゼリー状の組織を取り除き、出血や網膜を引っ張る組織を除去する手術です。抗VEGF療法は、新生血管の発生を抑える薬剤を眼球内に注射する治療法で、視力低下の進行を抑制する効果が期待できます。
どの治療法を選択するかは、患者さんの状態や病気の進行度合いによって異なりますので、眼科医とよく相談し、最適な治療法を選択することが大切です。
糖尿病網膜症の進行段階 | 治療法 | 説明 |
---|---|---|
初期段階 | 血糖コントロール、血圧コントロール、コレステロールコントロール (食事療法、運動療法、薬物療法) |
生活習慣の改善により、病気の進行を遅らせたり、予防したりする。 |
進行段階 (網膜に異常な血管が増殖し、視力に影響が出始める段階) |
レーザー治療 | 網膜にレーザーを照射し、異常な血管を凝固させることで、出血を抑制したり、新生血管の発生を抑えたりする。 |
進行段階 (網膜に異常な血管が増殖し、視力に影響が出始める段階) |
硝子体手術 | 眼球内の硝子体と、出血や網膜を引っ張る組織を取り除く手術。 |
進行段階 (網膜に異常な血管が増殖し、視力に影響が出始める段階) |
抗VEGF療法 | 新生血管の発生を抑える薬剤を眼球内に注射し、視力低下の進行を抑制する。 |
予防と早期発見
糖尿病網膜症は、糖尿病が原因で目の網膜にある血管が傷つく病気です。初期には自覚症状がない場合もありますが、進行すると視力低下や視界のゆがみなどが現れ、放置すると失明に至ることもあります。しかし、早期に発見して適切な治療を行えば、病気の進行を抑え、貴重な視力を守ることができます。
そのため、糖尿病と診断された方は、自覚症状の有無に関わらず、定期的に眼科を受診し、眼底検査を受けることが非常に重要です。眼底検査では、瞳孔を開いて眼底を観察し、網膜の状態を詳しく調べます。また、糖尿病網膜症は、血糖コントロールの状態が悪化することで進行しやすくなります。そのため、食事療法や運動療法を適切に行い、血糖値を良好な状態に保つことが重要です。さらに、血圧やコレステロール値が高いことも、糖尿病網膜症のリスクを高める要因となります。医師の指導のもと、これらの値を適切な範囲にコントロールすることも大切です。
糖尿病網膜症は、自覚症状が現れてからでは手遅れになることもあります。糖尿病と診断された方は、ご自身の目を守るためにも、定期的な眼科受診と生活習慣の改善を心がけましょう。
糖尿病網膜症とは | 原因 | 初期症状 | 進行時の症状 | 予防と対策 |
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糖尿病による網膜の血管損傷 | 糖尿病 | 自覚症状がない場合が多い | 視力低下、視界のゆがみ、失明 |
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